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不動産ブームの今こそJ-REITを使いこなす


不動産ブームの今こそJ-REITを使いこなす
不動産ブームの今こそJ-REITを使いこなす

今の投資信託の売れ筋といえば米国REIT(不動産投資信託)。債券と比較して、相対的に高い利回りが期待できるのが人気の理由です。J-REITの投資信託は人気こそ米国REITにおよびませんが、同様の魅力を備えています。不動産投資ブームがにわかに盛り上がる中、個人投資家が手軽に投資できるJ-REITに目を向けてみてはいかがでしょうか。

いつでも簡単に売買ができる「不動産」

2016年1月に始まったマイナス金利政策の影響で、預金金利や国債の金利がほぼゼロに近い水準まで低下しました。当時は株式市場も不調だったこともあり、実物資産である不動産への投資を勧める記事や広告が、雑誌などで頻繁に見られるようになりました。確かに、マンション投資はうまくいけば安定的な収益源になります。でもそれは、あくまで「うまくいけば」の話。うまくいかない場合は、入居者が現れず当てにしていた賃料収入が入らない、このままでは利益が見込めないからと物件を売ろうとしたが買い手がつかない、最終的には安値で売却を強いられて損失だけが残る、というパターンもありえます。長期で資産運用を行う際に、こうしたリスクを取ることが本当に理に適っているかどうか、きちんと考える必要があります。

個人が不動産に投資するのに、実物不動産を保有する必要はありません。この世界にはREITという便利な金融商品があります。REITは、言うなれば不動産の「一口オーナー」の権利。オフィスビルやマンションなどの不動産の一部を実質的に保有することとなり、その賃料収入の一部が利益として分配される仕組みです。また、J-REITの場合、個別銘柄は株式と同じように証券会社で自由に売買ができ、取引単位は最も安い銘柄で1口5万円程度(2017年1月末時点)。実物不動産と比較すれば、はるかに取引しやすいのが特徴です。REITの仕組みや投資対象については、過去に当サイトで紹介した特集記事「REITファンド基礎知識&運用戦略」で詳しく紹介しています。

実際にJ-REITに投資すると、どのくらいの分配金利回りが見込めるのでしょうか? 図表1は国債、株式、REITの平均利回りを比較したものです(2017年1月27日現在、米国REITのみ2016年12月末現在)。個人向け国債の利回りは、マイナス金利政策の影響で史上最低水準の年0.05%。東証1部上場の株式の平均配当利回りでも1.66%ですから、平均分配金利回りが3.56%のJ-REITは魅力的な水準です。米国REITの利回りにはやや劣るものの、J-REITには為替変動リスクがないので、値動きの安定性を加味すれば、米国REITに劣らない魅力を備えた金融商品だといえます。

【図表1】国債、株式、REITの平均利回りの比較

【図表1】国債、株式、REITの平均利回りの比較

値動きの大きさは株式と同程度、傾向はやや異なる

J-REITは市場で売買される金融商品なので、株式と同様に値動きが発生します。J-REITの値動きにはどのような傾向があるのでしょうか。図表2は、J-REIT全体の値動きを示す東証REIT指数と、日本を代表する株価指数の東証株価指数(TOPIX)を比較したものです。

ここ数年の傾向としては、J-REITの値動きの大きさは株式と大きな差はありません。株式と同等の値動きで、分配金利回りが株式より高いのであれば、単純に考えれば株式よりJ-REITの方が効率のいい投資先ということになります。値動きの傾向は、株式と同じ方向に変動する期間もあれば、株式と逆方向に動くときもあります。下図の期間で見ると、2014年から2015年まではおおむね株式と似たような値動きでしたが、2016年の7月以降は株式と逆方向に価格が動く傾向が見られました。今後も、株式に対して多少の分散効果を期待できるかもしれません。

【図表2】東証REIT指数とTOPIXの推移(2014年~2017年1月末)

【図表2】東証REIT指数とTOPIXの推移(2014年~2017年1月末)

投資口価格が大きく変動しても分配金は安定

過去において、J-REITの投資口価格(株式における株価に相当する価格)が激しく変動した局面がありました。東証REIT指数の史上最高値は、2007年5月31日の2612.98ポイント。史上最安値を記録したのは、そのわずか1年5カ月後の2008年10月28日で、704.46ポイントでした。下落幅は実に73%。サブプライムローン問題とリーマン・ショックの影響で、日経平均株価やTOPIXよりはるかに大きな落ち込みとなりました。

リーマン・ショックからしばらくの間、投資家の姿勢は株式やJ-REITに対して悲観的でした。しかし、当時のJ-REITの運用実績をあらためて見てみると、J-REITという金融商品の強さを再確認できます。図表3は、J-REIT市場の発足と同時に上場した2銘柄の投資口価格と分配金、分配金利回りの推移を示したものです。ご覧のとおり、投資口価格が大きく下落した局面でも、分配金の額はそれほど下がっていません。いずれの銘柄も、8000円前後の分配金を継続しています(年2回決算なので、年間では16000円程度)。分配金の金額をその時点の投資口価格で割った分配金利回りは、年率2%を下回ったことがありません。この分配金の安定性が、J-REITの最大の強みなのです。

ちなみに、日本ビルファンド投資法人を2007年5月末時点の98万5000円で買ったまま保有し続けていた場合でも、分配金利回りはおおむね1.5%を上回っています。投資口価格は当時を大きく下回っており、1月27日時点の投資口価格に分配金の累積額を足した合計も約83万円とトータルリターンはマイナスのままですが、もし2012年までのどこかのタイミングで、投資口価格が安いときに買って平均単価を下げていたら、トータルリターンはすでにプラスになっていると考えられます。

【図表3】J-REIT2銘柄の投資口価格と分配金の推移

日本ビルファンド投資法人
ジャパンリアルエステイト投資法人

※日本ビルファンド投資法人の2016年12月の分配金は予想

J-REITに投資できる手段は個別銘柄、ETF、投資信託

J-REITの個別銘柄は東京証券取引所などの証券取引所に上場しているため、株式と同じように証券会社で売買できます。2017年1月末現在で、全57銘柄が上場しています。東証REIT指数への連動を目指して運用するETF(上場投資信託)は7銘柄が上場しており、個別銘柄と同様に証券会社で取引できます。J-REITのETFに投資すれば、全銘柄にまんべんなく投資するのと同じ効果が得られます。

J-REITを投資対象とする投資信託は、東証REIT指数に連動するインデックス型と、投資信託会社が銘柄を選んで投資するアクティブ型があります。投資信託なので証券会社だけでなく、銀行や郵便局など幅広い金融機関で取り扱っています。1万円もしくはそれ以下で投資できることもメリットですが、アクティブ型はETFやインデックス型の投資信託と比べて、運用管理費用が相対的に高い傾向があるので注意が必要です。

以下に示したとおり、個別銘柄、ETF、投資信託には、それぞれ利点もあれば不利な点もあります。利便性や費用などを考慮したうえで、目的に合った投資方法を選びましょう。

  個別銘柄 ETF 投資信託
特徴 オフィスビル、住宅、商業施設、ホテル、物流など、さまざまな種類の不動産を保有するJ-REITを個別に選べる。値動きはETFや投資信託と比較すると大きい傾向 値動きは東証REIT指数に連動。J-REITの全セクターが投資対象なので、個別銘柄と比べると値動きは小さい傾向 投資対象は複数のJ-REIT。指数に連動するインデックス型と、投資信託会社が銘柄を選択して市場平均を上回る収益を目指すアクティブ型の2種類がある
販売会社 すべての証券会社 証券会社、銀行、郵便局、信用金庫などの金融機関(販売会社ごとに取り扱う商品は異なる)
取引方法 リアルタイムで、時価で取引を行う。価格を指定して売買を行う指値注文も可能 価格(基準価額)が決まるのは1日1回。売買注文後にが価格が確定するため、時価での取引ができない
取引単位 銘柄によって異なる。2017年1月末現在では5万円~65万円程度 銘柄によって異なる。2017年1月末現在、最低購入価格が最も低いのは約1800円 10000円以上、1円単位で購入額を決められる。販売会社によっては1000円程度から投資できることもある
分配回数 年2回(一部年1回の銘柄もあり) 年4回もしくは年6回 毎月分配から年1回分配まで、商品によってさまざま
手数料 売買手数料が発生。証券会社によって異なる 売買手数料のほか、ETFの運用管理費用(信託報酬)が発生する(費用は株価に反映される) 購入時手数料、運用管理費用など。運用管理費用はインデックス型はETFと同程度だが、アクティブ型は相対的に高い傾向

J-REITは今後も期待できるのか?

現時点でJ-REITは相対的に利回りの高い、魅力的な投資対象といえます。しかし、この先投資口価格が大きく値下がりして、しばらく価格が戻らないような状況に陥ってしまうと、いくら3%前後の分配金利回りがあっても、トータルリターンがマイナスになる可能性があります。

投資信託会社はJ-REITの市場をどのように見ているのでしょうか。主な投資信託の月報には、以下のように書かれています。(太字は編集部による)

 日銀は、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」による金融緩和を実施しており、世界的に長期金利の水準が上昇するなかで、今後は相対的に低位で推移する日本の金利環境およびJ-REITの相対的な利回りの高さを見直す動きが強まるものと考えています。
 また、従来から実施されているJ-REIT買い入れは、2017年についても昨年同様、年間900億円規模で実施され、市場を下支えすることが見込まれます。
 今後のJ-REIT市場は、低位で推移する金利環境を背景に、相対的に高いJ-REITの投資魅力度に着目する見方の強まりなどを想定し、緩やかに上昇する展開を見込みます。
 
『J-REIT・リサーチ・オープン(毎月決算型)』(三井住友トラスト・アセットマネジメント)月次レポート(2016年12月30日)

 2017年のJ-REIT市場のメインシナリオとしては、ファンダメンタルズの先行きに一部懸念は生じるものの、足元の金融環境が継続することを前提とすれば、J-REITの安定した収益や魅力的な分配金利回り水準に着目した資金流入、日銀の買い入れなどから、緩やかながらも上昇すると見込んでいます。一方で、中国や欧州におけるグローバルなマクロ経済環境の悪化や米国でのトランプ新大統領の政策動向など外部環境を要因とするリスクプレミアム(リスクのある投資に対して、投資家がそのリスク分に対して求める超過収益(上乗せ利益)のこと)の上昇は、J-REIT市場が弱含むリスク要因であると認識しています。
 
『ニッセイJ-REITファンド(毎月決算型)』(ニッセイアセットマネジメント)月報(2016年12月末)

共通見解として、国内で低金利の環境が今後もしばらく続く見込みであること、その環境がJ-REITにとって追い風となるために価格の上昇を見込んでいることが挙げられます。日銀による買い入れも、J-REITにとっては好材料です。現在のJ-REITの時価総額は約12兆円。日銀が2017年1月末までに購入したJ-REITの総額は3627億円で、時価総額の3%に匹敵します。日銀が保有するJ-REITは、今後も当分売られることはありません。国による下支えの効果は絶大です

現在の超低金利時代でもそれなりの運用利回りが期待でき、なおかつ為替変動リスクがないのがJ-REITの強み。今の投資環境が続く限りにおいては、資産運用の強力な武器になりそうです。投資信託なら少額で投資できるうえ、積み立て投資も簡単です。不動産投資について検討している方は、目標の収益を得る手段は本当に実物不動産でなければならないのか、J-REITで代替できないのか、あらためて考えてみましょう。すでに投資信託を運用している方で、米国REITや国内株式しか持っていないという方は、J-REITの投資信託を組み入れてみるといいかもしれません。