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トランプ新大統領の誕生でどうなる? 徹底検証!為替ヘッジあり vs 為替ヘッジなし


トランプ新大統領の誕生でどうなる?徹底検証!為替ヘッジあり vs 為替ヘッジなし
トランプ新大統領の誕生でどうなる?徹底検証!為替ヘッジあり vs 為替ヘッジなし

去る2016年11月9日に行われた米国大統領選は、クリントン氏優勢という下馬評を覆してトランプ氏が勝利をおさめました。この影響で株価や為替レートは大きく動くこととなり、肝を冷やしながら選挙の動向を見つめていた個人投資家も多いことでしょう。足元では円安ドル高が進行しています。この機会にあらためて投資と為替の関係、「為替ヘッジ」の取り扱いについて考えてみたいと思います。

米国大統領選挙で為替レートは大きく動いたが、そもそも為替とは変動するもの

まずは2016年11月のドル/円の為替レートを振り返ってみましょう。

■2016年11月のドル/円の為替レートの推移(日足)
2016年11月のドル/円の推移

大統領選挙の前には1ドル=102~106円で推移していた為替レートは、開票の直前まで上昇基調にありました。この頃にはクリントン氏の優勢が伝えられており、クリントン氏の勝利が米国経済にプラスの影響を与えると考えられたためです。ところが日本時間の11月9日午前に開票が始まり、クリントン氏の旗色が徐々に悪くなっていくと、急速に円高が進行。一時は1ドル=101円台まで円高が進んだのです。

状況が変わるのは9日の夜。トランプ氏の勝利が確実となり、米国経済への悲観論が叫ばれるかと思いきや、為替も株価も上昇に転じました。投資家は、トランプ大統領の誕生を米国経済にとって良い材料と判断したのです。ドル/円は円安ドル高方向に動き、米国の株価指数のNYダウは史上最高値を更新するほどの勢いを見せました。

11月の1カ月間だけで、ドル/円は1ドル=101円から114円へと、およそ13%の急上昇。米国株式や世界債券に投資する「為替ヘッジなし」の投資信託を保有していた方の中には、みるみるうちに上がっていく基準価額を見て、うれしい悲鳴を上げた方もいたのではないでしょうか。逆に、11月9日の為替と株価の急落を見て、「トランプ・ショックで不況が始まる。投資信託を今のうちに手放した方が得策だ」と判断して、あわてて売ってしまったことを後悔している方もいるかもしれません。たった一日がまんすれば、価格はほぼ元に戻ったのですから。

ただ覚えておきたいのは、そもそも為替とは上がったり下がったりを繰り返すものだということです。それも、米ドルや日本円、ユーロといった先進国通貨でさえ、長い目で見れば非常に大きな振れ幅になるのです。

■過去10年間のドル/円の為替レートの推移(2006年12月~2016年11月、月足、終値)
過去10年間のドル/円の為替レートの推移

上のグラフをご覧のとおり、過去10年でドル/円は125円→75円→125円と変動してきました。この間の最大変動率はなんと1.67倍。もしドルが最も安い(最も円高)ときに1万ドルを買い、ドルが最も高い(最も円安)ときに売れば、それだけで50万円以上の利益が出る計算になります(実際に外貨預金などで米ドルの取引を行う場合、ドル/円の為替レートは「買い」と「売り」で異なるのと、外貨の取引で得た利益には所定の税金が課せられるので、受け取れる利益はこれより少なくなります)。

もちろん、これだけ為替が動いたのは要因があります。2008年のリーマン・ショックに端を発する金融危機のときは、円高が大きく進行しました。ギリシャから始まった欧州債務危機も相対的に日本円の信用力を高め、円高の要因となりました。一方、2012年の政権交代後は、日銀の「異次元金融緩和」と呼ばれる金融政策などを背景に円安が進み、今に至ります。

確かに、米国大統領選挙は為替相場の流れを変えるひとつのきっかけといえます。しかし、仮にトランプ氏がいなくても、為替はいつか何らかの要因で動くもの。時として投資家の思惑とは逆方向に動くやっかいな代物だと考えた方がいいでしょう。また、米ドルと日本円という先進国通貨同士の為替でこんなにも動くのですから、新興国通貨はこれ以上に激しい値動きをすると思っておいて間違いありません。

為替変動の影響を減らす「為替ヘッジ」

海外の株式や債券、REIT(不動産投資信託)などを投資対象とする投資信託は、為替変動の影響を受けます。例えば米国株式ファンドであれば、株式そのものの価格変動とは別に、円安ドル高は基準価額の上昇、円高ドル安になれば基準価額の下落の要因となります。

投資信託を買ったあとに、対象となる資産の通貨が日本円に対して値上がりすれば利益が増えるのですが、逆に下がってしまうと、損失が生じる可能性があります。11月にドル/円が13%上昇したように、1カ月で為替レートが10%以上落ちてしまうこともあり得るので、買うタイミングによってはつらい目に遭うこともあります。

このような為替変動の影響を取り除く働きがあるのが「為替ヘッジ」という仕組みです。難しい説明は省きますが、「為替ヘッジあり」の投資信託では、為替の先物取引など為替レートの変動を相殺するような取引を行います。これによって、「為替変動リスク」をゼロに近づけるのです。

つまり、「為替ヘッジなし」と「為替ヘッジあり」の投資信託の違いは、以下のようにまとめられます。

為替ヘッジとは

「為替ヘッジあり」の投資信託では、例えば株式型であれば株価の値上がりや株式の配当のみが収益となり、為替レートの変動による損益はほとんど生じません。通常、値動きの幅は「為替ヘッジなし」より小さくなります。

金利差で決まる為替ヘッジの「コスト」と「プレミアム」

為替ヘッジには「ヘッジコスト」がかかります。為替変動の影響をゼロに近づける代わりに、一定のコストを支払うことになります。

コストは2つの通貨の金利差で決まります。投資対象国の通貨と日本円の短期金利の差がおおよそのヘッジコストとなります。仮定の話になりますが、米ドルの短期金利が年1.5%、日本円の短期金利が年0.5%であった場合は、下図のようにヘッジコストは1.0%となります。投資信託の収益を、ヘッジコストが年1%ほど押し下げるわけです。

ヘッジコスト

理論的には逆の場合も考えられます。日本円の金利より、投資対象国の通貨の金利が低いケースです。この場合は「ヘッジプレミアム」といって、短期金利の差が投資信託の利益に上乗せされることになります。

ヘッジプレミアム

もちろんご存知のように、日本はマイナス金利政策を導入しており、欧州も同じような状況です。一方、米国の政策金利は現時点で0.5%であり、追加利上げの可能性もあるため、対米ドルではヘッジコストが増大することが考えられます。ヘッジプレミアムが生じることは当分なさそうです。

ここまでの話を踏まえて、今後は「為替ヘッジあり」を選ぶべきか、「為替ヘッジなし」を選ぶべきか、考えてみましょう。

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