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マイナス金利に負けない! 今、資産を増やすならこの投資戦略


マイナス金利に負けない!今、資産を増やすならこの投資戦略

「マイナス金利」という言葉が世間を騒がせています。巷には「マイナス金利時代の資産運用術」といった記事や言説があふれていますが、本当のところはどうなのでしょうか。ファンド・アナリストの吉井崇裕さんに、今の市場環境にふさわしい投資戦略について聞きました。(データなどは2016年6月29日現在)

今回のポイント
  • マイナス金利でも安定した収益を期待できる投資信託はこの3本
  • 投資初心者の方は「外国債券・為替ヘッジあり」で分散投資
  • 経済が不安定なときこそ「債券」は外せない

マイナス金利を過度に恐れることはない
今こそ基本に立ち返って「分散投資」

2016年1月29日、日銀は「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を発表しました(日本銀行ウェブサイト)。対象は金融機関が日銀に預けている当座預金の一部で、銀行のお金を貸し出しや投資に回すことを促し、経済を活性化させる狙いがあります。

マイナス金利といっても、個人が銀行に預けている預貯金がマイナスになるわけではありません。それでも、マイナス金利の導入は個人投資家にも少なからぬ影響を与えています。例えば、国債金利の低下に伴い国債の価格は値上がりしました(過去に発行された国債の金利より、これから発行される国債の金利が低くなるので、金利が相対的に高い過去の国債が買われやすくなるため)。証券会社などが販売する公社債投資信託の一種であるMMFは、運用先の国債や公社債の利息が見込めないために繰り上げ償還が相次ぎました

マイナス金利が導入されてから5カ月後の6月末時点においては、株価の動きやいろいろな経済指標を見ると、日本経済の活性化に関して目立った成果は出ていないように見えます。6月24日には英国でEU(欧州連合)離脱の是非を問う国民投票が行われ、「離脱」が「残留」を上回ったことで、円高・株安がさらに進みました。

日経平均株価と日本の10年国債利回り(長期金利)の推移(2016年1月4日~6月27日)
日経平均株価と日本の10年国債利回り(長期金利)の推移
出所:各種データより編集部作成

国債価格の上昇により、2月下旬からずっとマイナスが続いている10年国債利回り(長期金利)も6月に入って大きく落ち込みました。こうした数字を見ると先行きが不安になり、投資に対しても後ろ向きな気持ちになりがちです。こういう状況では、投資信託のようなリスク資産に投資するのは控えた方がいいのでしょうか?

――難しい環境だからこそ、基本が大切です。

FA吉井崇裕

吉井:確かに、投資をするには難しい環境だといえます。一方で、世の中の動きを見ていると、マイナス金利を必要以上に恐れている方がいるように見えます。
確かに預金金利は下がりましたが、もともと金利はほぼゼロだったので、変化は誤差の範囲です。別にマイナス金利になったからといって、ものの値段は変わっていませんし、私たちの生活に大きな変化が起きたわけではありません。マイナス金利を恐れず、投資の基本に立ち返って、分散投資を実践することが大切だと思います。

吉井さんおすすめの投資戦略
安定的な収益が期待できる3本とは?

こういう難しい環境だからこそ、有利な投資信託はあるのでしょうか?

――あります。株価の下落局面でも、安定的に上昇してきた投資信託が。

FA吉井崇裕

吉井:今のような金利が極端に低下した局面では、やはり投資対象の選択肢は限られてきます。個人向け国債も決して悪くはありませんが、利率は税引き後で約0.04%と低水準です。利回りの面では、国債や国内債券型の投資信託は厳しい状況といえます。外国債券も、欧州中央銀行によるマイナス金利政策の影響で欧州の債券の利回りが低くなっているほか、米国も追加利上げを見送るなど、先進国全体で金利の上昇は見込みづらくなっています。株式やREIT(不動産投資信託)も値動きが粗く、債券のみ、あるいは株式のみに頼る運用は危険だと思います。

このような状況でも、オルタナティブ投資型のファンドの一部は比較的安定した値動きを続けています。オルタナティブ投資とは、通常の株式や債券などへの投資とは異なる資産、異なる手法で運用することをいいます。

数あるオルタナティブ型の投資信託の中で、2016年の年初からの株安局面やマイナス金利の導入後も、相対的に高い収益を上げ続けているものがあります。その商品とは、みずほ投信の『サムライバリュー』(正式名称は『ネット証券専用ファンドシリーズ AR国内バリュー株式ファンド』)です。

『サムライバリュー』の投資対象は国内株式です。ただしその運用方法はユニークで、その手法をひと言で説明すると「中小型バリュー株式を買い、TOPIX(東証株価指数)の指数先物を売る」というものです。

中小型バリュー株式とは、トヨタ自動車やNTTドコモといった大企業ではなく、それらより規模の小さい(正確には、時価総額が小さい)企業の株式(中小型株)のうち、株価が割安と判断される株式のこと。これらの株式を厳選して投資しながら「株価指数先物を売る」、つまり「株価が下がると利益が出る」という取引を同時に行うのがこのファンドの戦略です。このような「買い」と「売り」を同時に行う戦略を、「ロング・ショート」と呼びます。

ロング・ショート戦略で利益を得る仕組みは次の通りです。例えば、同じ10万円でAという株式を買い、Bという株式を空売りする場合を考えます。1カ月後、株Aは5%値上がりし、株Bは3%値上がりしました。この時点で両方の株を決済する、すなわち株Aを売却し、株Bを買い戻すと、差し引き2%分、つまり2000円分が利益となります(売買時の手数料などは考慮していません)。

この戦略を使えば、株式市場全体が下落傾向のときでも利益を狙えます。上記の例で株Aが3%値下がりし、株Bが5%値下がりした場合でも、同様に差し引き2%分が利益となるのです。買った株式の価格変動が売った株式の価格変動を上回りさえすれば、株式市場の下落局面でも利益を得られるのがロング・ショート戦略の最大の特徴です。商品分類に「特殊型(絶対収益追求型)」と書いてあるのはそういう意味です。

ロング・ショート戦略の仕組み
ロング・ショート戦略の仕組み1
ロング・ショート戦略の仕組み2

ロング・ショート戦略を行う投資信託はほかにもありますが、『サムライバリュー』はどういった点に特徴があるのでしょうか?

――中小型株を投資対象に選んでいることと、銘柄選択のうまさです。

FA吉井崇裕

吉井:「買い」に中小型株、「売り」にTOPIXの株価指数先物を選んでいるところがユニークです。中小型株市場と東証1部市場の特性の違いに収益機会を求めるファンドです。

加えて、銘柄選択が非常にうまいのが特徴です。選択した中小型株の値上がりがTOPIXを上回るほどファンドの収益が上がる仕組みですが、2016年に入ってからの基準価額の上昇がそれを示しています。

ただし、このファンドには弱点もあります。例えば、中小型株市場全体の市況が悪くなる場面では不利です。また、2013年の春から夏にかけては大型株の値上がりが非常に大きく、中小型株の値上がりが相対的に劣後したために、ファンドが下落したこともありました。

したがって、『サムライバリュー』のみに投資するのはリスクの面からもお勧めできません。先ほどお話ししたとおり、投資の基本に立ち返って、値動きの異なる複数の投資信託に分散投資することが大切です。

『サムライバリュー』と組み合わせると良い投資信託として、吉井さんは『トレンド・アロケーション・オープン』(三菱UFJ国際投信)と、『野村グローバル・ロング・ショート』(野村アセットマネジメント)の2本を挙げました。

『トレンド・アロケーション・オープン』は、世界の株式、債券、REITとコモディティ(金や原油などの資源)、オルタナティブ投資といった幅広い資産を投資対象として、市場の動きに合わせて資産配分を変更する仕組みを持つ、安定性を重視した投資信託です。『野村グローバル・ロング・ショート』は、商品名が示すとおりロング・ショート戦略を行いますが、投資対象が国内外の株式と債券である点が『サムライバリュー』との違いです。

FA吉井崇裕

吉井:『トレンド・アロケーション・オープン』は、投資初心者の方にもおすすめできる、比較的リスクの低いバランスファンドです。これと値動きの傾向が異なる商品として、「ロング・ショート戦略のバランス型」という位置付けの『野村グローバル・ロング・ショート』を選びました。この2本を『サムライバリュー』と組み合わせることで、過去3年間では年3%台の運用利回りとなりました。

3本の投資信託の値動きと合成指数(2012年3月30日~2016年6月27日)
3本の投資信託の値動きと合成指数
※2012年3月30日時点の分配金再投資基準価額を10000として指数化。実際のリターンは、購入時手数料や税金(NISA口座以外で運用する場合)などにより上記の記載より低くなることがあります。
出所:各投信会社のホームページなどのデータをもとに編集部作成

「外国債券・為替ヘッジあり」の投資信託も
マイナス金利下の分散投資には有効

『サムライバリュー』などのロング・ショート型の投資信託は仕組みがやや複雑で初心者には難しく、購入できる販売会社も限られています。マイナス金利に負けない運用を実践できる投資信託は、このほかにもあるのでしょうか?

――投資初心者の方には、外国債券型の投資信託をおすすめします。

FA吉井崇裕

吉井:実は、現時点で『サムライバリュー』は大手ネット証券のみの取り扱いで、『野村グローバル・ロング・ショート』もそれに近い状況です。ネット証券以外の金融機関にNISA口座を開設している方にとっては身近とはいえない商品です。商品の特性もやや複雑なため、ある程度投資に慣れてから購入した方がいいかもしれません。

投資初心者の方には、外国債券に投資するタイプの投資信託を勧めたいと思います。海外の先進国も金利が低いとはいえ、それなりの収益は見込めます。特に、すでに株式型のファンドを多く保有している方にとっては、株価が下落する局面で値上がりしやすいという債券の特性が分散効果として発揮されやすくなります

どの商品を選ぶかは、現在保有しているほかの投資信託や、リスク許容度によって異なります。余裕がある方なら相対的に高利回りな米国の社債に投資する、ヘッジなしの投資信託を選ぶのもいいでしょう。ただ、市場の先行きが不透明な今のような状況では、為替ヘッジありの商品を選ぶのが無難ではないかと思います。

例えば、『トレンド・アロケーション・オープン』と『BAMワールド・ボンド&カレンシー・ファンド(毎月決算型)(愛称:ウィンドミル)』(ベアリング投信投資顧問)の値動きを比べると、ところどころで逆の値動きを示し、お互いのマイナスを相殺していることが見てとれます。合成指数の推移を見ると、短期的な値動きこそ先ほどの3本の分散投資よりは大きくなりましたが、3年間のトータルリターンは年率でほぼ3%となりました。なお『ウィンドミル』にNISA口座で投資する場合は、「年1回決算型」を選んだ方が、より効率的な運用が期待できます。

『ウィンドミル』と『トレンド・アロケーション・オープン』の値動きと合成指数
(2012年3月30日~2016年6月27日)
投資信託の値動きと合成指数
※2012年3月30日時点の分配金再投資基準価額を10000として指数化。実際のリターンは、購入時手数料や税金(NISA口座以外で運用する場合)などにより上記の記載より低くなることがあります。
出所:各投信会社のホームページなどのデータをもとに編集部作成

同様に、外国債券型の投資信託としてこのところ人気が高まっている『東京海上・ニッポン世界債券ファンド(為替ヘッジあり)』(東京海上アセットマネジメント)と組み合わせた場合でも、3年間のトータルリターンは年率3%台となりました。

『東京海上・ニッポン世界債券ファンド』と『トレンド・アロケーション・オープン』の値動きと合成指数
(2012年3月30日~2016年6月27日)
上記2本の投資信託の値動きと合成指数
※2012年3月30日時点の分配金再投資基準価額を10000として指数化。実際のリターンは、購入時手数料や税金(NISA口座以外で運用する場合)などにより上記の記載より低くなることがあります。
出所:各投信会社のホームページなどのデータをもとに編集部作成

英国のEU離脱を問う国民投票の結果で、株価や為替が大きく動きました。今後も国内では参議院議員選挙、米国では大統領選挙と、経済にも大きな影響を及ぼしそうなイベントが続きます。先行きが不安なときは、どんな運用をすればいいのでしょうか?

――経済が不安定なときこそ、「債券」は外せません。

FA吉井崇裕

吉井:マイナス金利政策は日本経済を活性化させるための金融政策ですが、政府や日銀の思惑通りの結果になるとは限りません。消費税増税の延期により、物価が上昇するペースも鈍る可能性があります。景気循環を考えると、株価もいつかは下落局面を迎えることになると思います。そんな時は、分散投資でリスクを抑えた運用をすることが重要になります。株式の割合を減らして、債券に切り替えていくことを考えるべきでしょう。

難しいときこそ王道に立ち返る。資産運用の王道とは、資産分散と時間分散です。マイナス金利や不景気を怖がりすぎず、これまでの資産運用を省みる機会として利用するくらいの気持ちでいたいものです。

吉井 崇裕さんイデア・ファンド・コンサルティング代表取締役 兼楽天証券経済研究所ファンド・アナリスト
吉井 崇裕さん
イデア・ファンド・コンサルティング代表取締役
兼 楽天証券経済研究所 ファンド・アナリスト

投資信託業界での販売・運用・評価分析という幅広い経験から業界の裏事情まで熟知し、投資信託の評価においては定量・定性分析の両面に精通する。ファンド・アナリストとして、国内約5,000本の投資信託を常時分析している。楽天証券のコラムや日経マネーなど執筆多数。