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識者に聞く、世界のREIT市場の現状と見通し


人気だからこそ、魅力とリスクを正しく知りたい REITファンド基礎知識&運用戦略
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識者に聞く、世界のREIT市場の現状と見通し

6月に英国で行われた国民投票で、英国民はEU(欧州連合)からの離脱を選びました。この結果を受けて円高が進行し、日経平均株価が暴落するなど、世界の金融市場は大きな混乱に見舞われました。REIT市場の先行きを心配する方も多いかと思います。
Brexit(英国のEU離脱)が世界のREITに及ぼす影響と、REIT市場の見通しについて、ラサール不動産投資顧問の西村章さんにお話をうかがいました。

英国のREITはむしろ割安、米国は好調だが割高感も 分散投資して価格変動を抑えることが肝心
英国のREITはむしろ割安、米国は好調だが割高感分散投資して価格変動を抑えることが肝心
クライアント キャピタル グループ 執行役員 マネージングディレクター 西村章氏

ラサール不動産投資顧問
クライアント キャピタル グループ
執行役員
マネージングディレクター

西村章氏

英国のREITは「シティ」の物件をあまり保有していない

2016年7月末時点で、全世界のREITの保有物件のうち、6割強を米国が占めています。日本が9%、オーストラリアが8%。フランスなどの欧州が6%で、英国は5%程度にすぎません。グローバルREITに投資している方にとっては、たとえ英国のREITの価格が下落したとしても、その影響は限定的です。

もちろん、英国のEU離脱は英国内の不動産市況にさまざまな影響を及ぼすことが考えられます。国民投票が行われる前の英国は景気が良く、経済を支えていたのは金融セクターでした。ロンドンに各国の金融機関の拠点が集中しているのは、英国がEUに属しているからです。もし英国がEUを離脱すれば、英国拠点を撤退・縮小する金融機関もあるでしょう。それに付随して金融に特化した法律事務所や会計事務所、コンサルティング会社のような企業もイギリスを離れる可能性があるので、ロンドンの「シティ」と呼ばれる金融街などでは、オフィスビルの賃料や稼働率への影響は避けられないと思います。

ですが英国のREITは、大手金融機関が入るオフィスビルをあまり所有していません。REITに関していえば、直接の影響は少ないと考えられます。ラサールではREITが保有している物件をその賃貸借契約まで細かく見ているのですが、現状で英国のREITの投資口価格は割安だと判断しています。

英国がEUを離脱すると、企業や金融機関が英国内の拠点をEU圏内のパリやフランクフルトなどに移転させる可能性があります。そうなれば欧州の物件を多く持つREITにとってはプラスですが、欧州は米国と比較すると景気が弱いので、英国のEU離脱によって欧州のREITが上向きになるとは一概に言えません。アジアのREITについては、例えば中国の対英国の貿易額はGDP比では2%程度に過ぎないため、影響は小さいと考えています。

REITへの投資に関しては、「Brexit」の影響はあまり心配する必要はないと思います。

「景気循環」と「不動産のタイプ」を分散する

北米REITのリスク要因は米国の景気ですが、当面は心配していません。毎月発表される米国の雇用統計を見ても、本年6月の発表は弱かったものの、7月発表の雇用者数は大きく増えており、景気の底堅さを示す結果となりました。雇用が増えればオフィスビルの需要が高まり、賃料の上昇につながります。米国のREITが値崩れを起こすリスクは、現状では小さいと考えています。

ただし、REITに投資する際に心得ておきたいのは、同じ地域のREITの値上がりや値下がりは長期間続かないということです。例えば、直近では米国やアジアのREITのパフォーマンスが良く、英国や欧州のREITのパフォーマンスはそれほど良くないのですが、2015年の1年間では英国や欧州の方が好調でした。一方で、現在我々が英国のREITを割安と判断しているのと対照的に、米国のREITは経済指標が良く投資口価格が高くなっている分、相対的に割高感があると見ています。

今後どの地域のREITが値上がりするかわかればいいのですが、なかなか正確に予測できません。REITが割高か割安か、タイミングを見計らって投資するのは個人投資家には難しいものです。

たとえ米国のREITが足元で調子が良いからといって、米国REITの投資信託だけを買うのはリスクが高いと思います。複数の地域のREITに投資をするか、あるいはグローバル型のREITファンドを選び結果的に分散投資をするのが良いのではないでしょうか。

グローバルREITのメリットは、地域ごとに景気循環のサイクルが異なるため、REITの値上がりと値下がりの時期もずれることでリスク分散ができることです。また、J-REITはオフィス特化型のREITが多いのですが、グローバルREITは住宅や物流施設、商業施設など多様な物件に投資をするものも多く、投資対象がより分散されているのも魅力です。例えばオフィスと住宅では入居者の契約期間の長さがそれぞれ違いますし、オフィスは景気に敏感で住宅は景気変動の影響を大きく受けにくいなど、物件の性質に違いがあるからです。「投資する不動産の分散」による価格変動の安定化を図ることも、グローバルREITに分散投資する意義といえます。

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